パブリッククラウド使って安くなるのかどうか

仕事柄、オンプレミスとのコスト比較をやることもままあるのですが、IaaS ベースのシステムだと思ったより(?)安くならないことも多いように思います。 IaaS のシステムをパブリッククラウドで構築する場合、とくに日本の場合には閉域の接続を利用することも多く、台数が少ない場合には回線の費用がかなり高く見えます。

Azure の場合には ExpressRoute が閉域の接続にあたりますが、キャリア次第ではありますが月額 10 万円以上かかることが多いように思っています。 ちなみに、ExpressRoute 自体は実はそこまで高くなく、月額費用としては数千円から、となっています。(cf. Azure ExpressRoute の価格) IaaS の VM の費用は 1 台当たり 1 万円程度で済むようなサイズも多いですし、そうするとかなり高く見えます。

インフラ以外のコストをどう見るか

ワークショップなどでこういった話をするときにはインフラのコストとして一部の運用費用も含まれています、という説明をしています。 私もかつてはオンプレミスのシステムを運用していましたが、たとえばストレージの HDD が壊れて、保守をお願いしている業者に連絡し、オンサイトをお願いすることもそれなりの頻度でありました。 つまりストレージのアラートを受け取ってそこから保守を依頼するといった運用があり、それに応じた人的コストも発生していました。

大抵のパブリッククラウドの場合には IaaS 一式の費用としてこういったものも含まれており、つまり人的コストの一部も含まれていると考えられるため、単純なインフラだけのコストだけでは比較しきれません。 普段の運用タスクが一部減る、といった具合において、それにより削減されたコスト、というのもなかなかとらえづらいのではと考えています。

パブリッククラウドの学習コスト

私の持論として、やはりパブリッククラウドはエンドユーザ自身で運用できなければそのメリットをフルに生かせないと考えています。 SIer にいた頃には、自社のクラウド基盤を利用してお客様のシステムを構築することも多かったです。 ただ、その場合、エンドユーザから見てそれがどういった基盤で動いているかはすでに抽象化されており、パブリッククラウドである必要性がかなり薄いです。 一方で、パブリッククラウドを利用して外部ベンダーに構築を依頼すると、そのメリットが失われているとも考えられます。

一例として、申請書を提出し、実際に VM が作成され、ユーザアカウントと IP アドレスをもらうまでに数営業日掛かるといったケースが多いのではと思います。 これに対して、パブリッククラウドを自分で利用する場合には VM 単体の作成だけであれば数分で済みます。

ただ、そのためにはパブリッククラウドについてさまざまな内容を学習する必要があり、この学習コストもそれなりと考えられます。 私もオンプレミスの仮想化環境にはある程度慣れていましたが、パブリッククラウドに慣れるまでにはかなり時間を要したように思います。 いわゆる L2/L3 のネットワークの知識がまったく役に立たないわけではないですが、内部的には SDN を利用していることからもかなり特徴があります。 オンプレミスの頃にはできなかったような構成も構成しうることもありますし、一方でオンプレミスだったら簡単にできていた構成がパブリッククラウドだと苦労することも多いです。

まとめ

パブリッククラウドのコストについてちょっと考えてみました。 まだ書きたいこともいっぱいあるんですが、ここまでにします。 コストは大事な検討事項の 1 つだとは思いますが、今後もっと複数の観点から検討できればとは思っています。